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このようなレーダー情報提供システムは、VTS用途に提案されているVHF−DSC(Very High Frequency−Digital Selective Calling)、STDMA(Self−organizing Time Division Multiple Access)など、AIS(Automatic Identification System)(13)との連携が必須であるし、有人のセンター局が無いと成り立たない。さらに本システムを真に有効にするには、小型船舶も包含した国際的な船間通信方式の合意が必要であることに留意したい。

 

注:本報告書の範囲外の事項であるが、VHFによる船舶の位置通報を利用できる既存の海上交通センターでは、船間通信に制約があるとしても、現用のシステムに多少の変更を加えれば、沿岸情報の提供は実現可能であり、このようなシステム改良については別途検討する価値がある。

 

本システムは、既存の海上交通センターが運用されている海域は適用外であるので、新たなレーダー設備が必要となる。沿岸情報センターでは、船位自動通報システムの整備が海上監視レーダーの整備と時間的に整合せず、前者が遅れる場合も考えられる。船位自動通報システムが整備されるまでの期間、過渡的に国際VHF等の音声による支援情報提供も次善の策である。

船位自動通報システムについては、IMO(国際海事機構)、IALA(国際航路標識協会)及びITU(国際電気通信連合)などの関係機関により現在検討がなされている。

章末付録にこれに関するITUの資料の一部(14)を添付する。

 

2.5 レーダー監視対象海域

対象海域は、沿岸海域の船舶通航が収束する海岸線の突起部である。例えば、石廊埼沖、御前崎沖、潮岬沖等である。このような場所は、昔から船舶通行の難所であるので多くの場合既設の灯台がある。従って、海上監視レーダーは灯台を中心にした配置となる。

これらの海域を航行する船舶の平均速力を12ノットとし、行き会い船を約1時間前から確認したいとする。相対速力は24ノットであるから、少なくとも約24浬先の船の動静を知る必要がある。例えば石廊埼沖の場合、図2.5.1に示すような監視海域に相当する。

これから、海上監視レーダーの監視範囲は少なくとも24〜30浬(44km〜56km)となる。船位通報システムが機能していることを前提にしているので、目標船舶の大小を判別する必要は無いこと、外洋に面している沿岸監視であるから船間距離は大きいことからVTS用レーダーのような分解能は不要である。レーダーからの距離44kmの地点で200m程度の分解能を想定すると、アンテナビーム幅0.25度〜0.5度、パルス幅1μs程度を基準とすれば十分と考えられる。ただし沿岸の至近距離で分解能が必要な場合もあるから、0.5μS程度のパルス幅も用意すべきである。

処理可能な船舶数は漁船密集等を考慮し、海上交通センターと同程度のものを用意したい。このレーダーは気象現象に左右されないものでありたい。悪天侯時の遠距離感度に焦点を絞り、降水粒子による減衰とクラッタに留意し、短い波長は避け、CバンドまたはSバンドを選択したい。海上監視レーダーでは、レーダー監視の阻害要因となる雨粒の形状(雨粒は降水量が多いほど扁平で、いわば空豆に類似の形状になる)、アンテナパターンがファンビームであること(反射鏡の非対称性等から理想的な円偏波の放射は困難)、お

 

 

 

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